平塚松風司法書士事務所

司法書士 大谷 潔

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市民公開講座

司会者:本日の公開市民講座は、前回に引き続いて松風大学の満点教授から、憲法の最高法規性と違憲(いけん)立法審査権についてお話いただきます。それでは、満点教授、よろしくお願いします。」

満点教授:「憲法が最高法規であることは、皆さんおわかりになっていると思いますが、単に『最高法規』と書いてあるだけで最高法規の役割を果たしてくれるのでしょうか?

 らい(ハンセン病)予防法という法律がありました。ハンセン病という病気は感染力が弱く、感染しても発病しにくく、発病しても完全に治る病気です。しかし、以前は、らい予防法により、ハンセン病に感染した人は人里はなれた療養所に強制的に入院させられ、社会から完全に隔離(かくり)されました。子どもを生むことも許されませんでした。隔離(かくり)の必要がなかったのに隔離(かくり)したというのは、人格権【注:憲法13条】人身の自由【憲法31条】と居住・移転の自由【憲法22条】に反するし、差別を助長した意味では、法の下の平等【憲法14条】に反します。そのような法律が平成8年にやっと廃止されるまで存続してしまったのです。

 この問題につき、熊本地方裁判所は、平成11年に、この法律は明らかに憲法に違反しており、そのような法律を長年放置して、廃止しなかったのは、立法権を持つ国会議員の過失であったと判断して、国家賠償を認めました。裁判所には、このように、法律や政令、行政行為などが憲法に違反しているかいないかを具体的な事件の解決に際して判断する権限が与えられています。これまで法律が憲法に違反していると判断されたのは、親を殺した場合は、親以外の人を殺した場合よりも重く罰せられると規定された刑法200条の尊属(そんぞく)殺人(さつじん)罪(ざい)の刑罰が重すぎると判断された場合や、薬局を開店する際に、他の既存の薬局と一定の距離を置かなければならないと定められていた薬事法の規定が、不必要な規制で、営業の自由に反すると判断された事件などがあります。

 憲法が最高法規であっても、憲法に反する法律や政令が制定されたり、憲法に違反する行政行為が行われてしまっては、憲法が最高法規である意味がなくなってしまいます。そこで、憲法は、憲法が守られるように、そして最高法規であり続けるように、裁判所に、法律、政令、行政行為等が憲法に違反するかしないかを判断し、憲法に違反する場合は無効を宣言する権限を与えています。そのようにして憲法が最高法規であり続けられるのです。

 それでは、私の話はここまでにして、皆さんから何かご質問はありませんか?」

市民A:「裁判所は憲法に違反する法律の無効を宣言することができるといわれましたが、裁判所がある法律を『違憲無効』と宣言したら、その法律は廃止されるのですか?」

満点教授:「『裁判所が違憲無効を宣言した法律は効力を停止される』という見解もありますが、そうなると、裁判所が法律を廃止するという立法行為をすることになってしまい、国会の立法権(憲法41条「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」)を侵すことになってしまいますので、裁判所の判決に法律の廃止の効力までは認めず、当該判決に関する事件についてのみ、その違憲とされた法律の部分を適用しない、と考える見解が多数説です。しかし、裁判所によって違憲と判断された法律は国会によって速やかに廃止されるべきですし、行政機関もその法律の適用をするべきではないと考えられています。刑法200条の尊属殺人の重罰規定が違憲とされたのは、1973年でしたが、刑法200条が削除されたのは、刑法が文語体から現代文に書き改められた1995年まで、22年間待たなければなりませんでした。その間検察官は、親を殺した事件でも刑法200条を適用しないで、刑法199条の普通殺人罪で起訴していました。

市民B:「最高裁長官は内閣が指名して天皇が任命する【憲法6条】のだし、最高裁長官以外の最高裁の裁判官は、内閣が任命する【憲法79条1項】となっているのですから、内閣は自分たちの政策に対する違憲判決を書きそうな裁判官を指名もしくは任命しないのではないでしょうか?そうなると、裁判所の違憲立法審査権もあまり機能しないという恐れもあるのですが。」

満点教授:「そういう恐れもないとはいえません。そこで、最高裁判所の裁判官を国民が審査して、最高裁判所の裁判官にふさわしくないと思った裁判官に、やめさせたいという投票をして、やめさせたいという投票が過半数になったら、その裁判官はやめさせられるという、国民審査【憲法79条2項】という制度があります。しかし、これまでやめさせたいという投票はせいぜい1割くらいしかなく、今まで国民審査でやめさせられた裁判官はいません。私たちも、もっと最高裁の判決のことを一般の人たちにわかるように解説しなければならないと思いますが、皆さんも是非最高裁の判決には関心を持っていただき、国民審査が機能するようにしていきたいと思います。」

市民C:「憲法は最高法規ですが、時代に合わなくなったら改正すべきだと思います。全部書き換えることもできるのですか?」

満点教授:「憲法改正の手続きは、憲法96条に規定されていますが、その改正手続きで憲法を無制限に改正できるという説(無限解説)もありますが、憲法改正手続きで改正できる範囲には限界があるとする説(限界説)が多数説です。たとえば、国民主権をやめて、天皇主権に変えるということは、日本国憲法の基本原理に反することをこの憲法の改正手続きでやろうとすることになり、自己否定になるからできない、と考えられています。『全部書き換える』ということが、基本原理の変更まで含んでいるのでしたら、できない、という答えになると思います。基本原理を変えない範囲で全文を書き換える改正ができるという見解と、全文の書き換えは現行憲法との同一性を失わせるので、『憲法改正』手続きで予定されていないと考える見解とがあります。」

司会者:「それでは、これで時間になりましたので、本日の公開市民講座を終了させていただきます。活発なご質問、ありがとうございました。」

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